ここ数年の豪雨・台風・洪水・大雪の被害で支払われる保険金がヤバいことになっているそうです。日本以外でも最近は豪雨・台風(ハリケーン)・熱波などの被害が酷いですよね。
先日の静岡県熱海市での土石流被害も豪雨が原因でした。もっとも熱海の土石流の場合は盛り土が本当の原因だったという専門家の声もありますが。
近年の豪雨・台風・洪水・大雪による保険金支払額
いずれにしてもここ数年の異常気象は本当に酷いですよね。それらの豪雨・台風・洪水・大雪の被害で支払われる保険金がいったいどれくらいだったのかについては損害保険協会のサイトで調べることができます。大きな被害があったものだけでもこんなにあります。
保険金に含まれているのは、自動車保険・火災保険・新種保険です。
年月と事象 | 都道府県・地域 | 保険金支払額 |
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2021(令和3)年1月7日 大雪 | 主に北海道・東北・北陸 | 455億1585万円(69,930件) |
2020(令和2)年9月 台風10号 | 東京・愛知・三重・兵庫・広島・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島・熊本・大分・宮崎など | 980億8,836万円(146,402件) |
2020(令和2)年7月 豪雨 | 山形・岐阜・愛知・兵庫・福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島など | 1,054億7,879万円(40,002 件) |
2019(令和元)年10月25日 大雨 | 福島・茨城・千葉など | 238億5,317万円(11,283件) |
2019(令和元)年 台風19号 【令和元年東日本台風】 |
岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡・愛知・三重など | 5,826億450万円(295,186件) |
2019(令和元)年 台風15号 【令和元年房総半島台風】 |
茨城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡など | 4,656億1,249万円(383,585件) |
この2年程を見ただけでも毎年3回ほどの自然災害による大きな被害があることがわかります。
東日本大震災の地震保険金はいくらか
日本損害保険協会が公式サイト上で発表している「地震による保険金支払」によりますと、これまで最も多かった地震保険金の支払いは「東日本大震災(平成23年東北地方太平洋沖地震)」の12,862億円です。もうここまで来ると一般庶民には数字が読めません。えーっと、1兆2,862億円ですね。以下、このようになっています。
- 東日本大震災(平成23年東北地方太平洋沖地震)2011年3月11日 12,862億円
- 平成28年熊本地震 2016年4月14日 3,883億円
- 大阪府北部を震源とする地震 2018年6月18日 1,162億円
- 平成7年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災) 1995年1月17日 783億円
- 平成30年北海道胆振東部地震 2018年9月6日 494億円
こうして見てみますと、東日本大震災がいかに大きな被害をもたらしたかがよくわかります。阪神淡路大震災が保険金支払額では意外とそれほど多くはなかったのは地震保険に加入している世帯がまだそれほど多くなかったから、とも言われています。
地震保険世帯加入率と地震保険付帯率は?
日本地震再保険株式会社が発表しているデータでは、阪神淡路大震災が発生した1995年頃の全国での地震保険世帯加入率はわずか9.0%、兵庫県の加入率はそれをさらに大幅に下回る2.9%だそうです。
この阪神淡路大震災により地震保険の大切さが伝わったのか、保険会社も地震保険の販売に力を入れました。
一方、東日本大震災が発生したときの地震保険世帯加入率は23.7%。つまり阪神淡路大震災から16年ほど経ってはいますが地震保険加入率が大幅に増加したことがわかります(と言っても「世帯加入率」で見ると少ないと思う)。
参考までに現在2021年のこの記事を書いている時点で確認できる最新情報によりますと、現在の地震保険世帯加入率(2019年)は33.1%です。世帯加入率はそんなものなんですね。
一方、地震保険付帯率は66.7%ですから、火災保険に加入している契約者のうち2/3の方は地震保険に加入していることになります。
つまり、地震保険付帯率の割に世帯加入率が低いというのは、そもそも火災保険に加入していない人が多いということなのでしょう。私のように火災保険や地震保険に加入するのが当たり前と感じている人間からするとちょっと驚きです。
豪雨・台風・洪水・大雪が起きると保険会社は何をしているか
保険会社では、大きな自然災害があると、当然保険金の支払いが発生するということですので各社ごとに「災害対策本部」「災害対策室」といった部署が設けられます。
そして、日本損害保険協会にそれぞれの災害でいくらの保険金を支払ったのかを報告することになっています。それで上記のような統計が出てくるわけです。その報告のために特定の災害に関する被災の報告(保険会社では「事故受付」と呼んでいます)が一定数あると「特災コード」というのが出て、集計しやすいようになっているんですね。
一つの災害での保険金支払業務は何ヶ月も続きますので、その支払い処理が終わる前に次の災害が起きます。なので、この「災害対策本部」「災害対策室」の仕事は終わることなく延々と続くんです。地震の場合にはもっと長く、何年も続きます。被害が甚大であればあるほどその期間も長くなります(地震の大きさではなく「被害」の大きさ、です)。
被害が起きた当初は、とにかくマンパワーが必要ですから、被災していない地域の社員など、とにかく人を集めてきて大人数で電話受付や調査の日程調整、調査、支払手続きをします。
私も某保険会社でその仕事を実際に行なっていましたが、被災直後はとにかく忙しくなります。
巷(ちまた)では、保険会社は「保険金を払い渋ってる」とか「払わないようにいろいろ理由を作っている」と聞くかも知れませんが、このような災害のときには決してそんなことはなく、むしろ逆です。「一件でも多く、すぐに支払ができるように」とみんな頑張っています。
保険金を支払うことで、契約者とそのご家族が生活を立て直す助けになればと思って働いている方がほとんどだと思います。少なくとも私の周りではそうでした。
迅速な支払のための各保険会社の対応
各保険会社は、迅速な保険金支払のために様々な新技術を使い始めています。保険会社各社の対応は下記の通りです。
東京海上日動 人工衛星を使って被災地をレーダー衛星で観測し、被害を「全損」などに3分類。報道写真などと照らし合わせて認定を進めている。この手法により熱海の土石流被害では被災から1週間足らずで5件を全損認定。
三井住友海上 ドローンと、顧客からネットの専用サイトで受け取った写真などを組み合わせて浸水被害を調べる仕組みを6月の時点ですでに作っていた。今回の被害に関してもそのサイトを使い、自己申告で浸水被害を認定。
あいおいニッセイ同和 契約者が住宅の浸水場所とペットボトルを並べた写真を撮影・送信すれば保険金を自動的に見積もる。
損害保険ジャパン 浸水の深さを測る目安として500mlのペットボトル1本を使う。これにLINEアプリとAIを活用し迅速な保険金支払に役立てる。
出典:朝日新聞2021年7月20日朝刊
まとめ
時々、契約者の方かたお手紙を頂くことがありました。「迅速に対応してくださり本当に助かりました。ありがとうございます」というような感謝のお手紙です。そんなお手紙を頂いたときには残業が続いて疲れているときでも「頑張ろう!」という気持ちになるものです。
記事の最後になりますが、このたびの熱海の土石流被害に遭われた皆様には心よりお見舞い・お悔やみ申し上げます。
今後の地震発生の可能性を考えますと、地震保険には加入しておいたほうが良いと思うのは私だけでしょうか。最後まで読んでくださり、ありがとうございました!