交通事故が起きたあと、通常は保険会社同士で話し合いますよね。そして、どっちがどれくらい悪いかみたいな話し合いがなされて、Aさんは60%、Bさんは40%です。
みたいなことを言われたことはありませんか?
そして、こんなふうに思ったことありませんか?
過失割合、誰がどうやって決めてるの?
交通事故に遭ったことのある方はたいてい皆さん「誰がどうやって決めてるの?根拠は何?」とそう言います。初めて事故に遭った方は特にそう思うことでしょう。
では、その過失割合(つまり、責任の割合)は誰がどうやって決めているのでしょうか?
もし、双方が任意保険会社に加入しているのであれば、その任意保険の保険会社担当が担当者同士で話し合って決めます。とはいえ、勝手に決めているわけではありません。事故当事者に「今回の事故の場合は●●対○○になりました。それでいいですか?」というように確認をします。
では、何を根拠に過失割合を出すのでしょうか? それは保険会社の大きい、小さいと言った力関係によって決まってくるのでしょうか。
昔からよく言われてきた「保険会社の大きい小さいと言った力関係によって過失割合が決まる」ということは、実際にはありません。
では何が過失割合を決めるうえで重要な要素になるのでしょうか。それはズバリ!「判例タイムズ(判例タイムズ社)」です。保険会社担当者は交通事故の過失割合を決めるうえでこの「判例タイムズ」を必ず確認しています。当該事故が、判例タイムズのどれに当てはまるのかを調べ、基本過失割合を確認します。そして、過失の修正要素があったかどうかを確認します。
たとえば、A車が十字路交差点で直進するはずだった。ところが前方の信号機が赤になり、右折の矢印信号が青になった。いわゆる残留右折車のための右折信号機だ。A車は信号機が右折信号が出ていることには気付いていたが、まだ青でも行けるタイミングだと感じたようだ。
この事故の場合は、この状況では、基本的には直進車側に過失が大きい事案ということになります。そして、じゃあどれくらい悪いのかということですが、それは次の点で確認することになります。
- A車(直進車)の交差点進入時の速度がどれくらいだったのか?
- A車に制限速度15km以上の速度違反があったか?(あれば過失は+5%)
- あるいは30km以上の速度違反があったか?(あれば過失は+10%)
- B側(右折信号を見て右折してきた車両側)が合図を忘れていないか?(あれば過失は+10%)
というようなことが「判例タイムズ38 過失相殺率の認定基準」に出ています。この事故では過失はどうなるのか?が過去の裁判例をもとにまとめられているんです。
もちろん交通事故の中で、まったく同じ事故はありません。でも、ある程度は類型化されています。類型化されていない例外となる事案については個別に検討することになります。
双方の言い分が食い違う場合はどうなるのか?
双方の言い分(主張)が食い違う場合には大抵の場合、調査が入ります。もしそれが人身事故であれば保険会社は「刑事記録」を調査することでしょう。刑事記録には次のものが含まれます。
- 実況見分調書
- 被害者供述調書
- 加害者供述調書
上記の刑事記録は警察が作ります。人身事故の場合はほぼ必ず実況見分、いわゆる「現場検証」が行われます。事故現場を衝突地点を起点として、事故当事者双方にいろいろ聞いていくわけですね。たとえば、
- 最初に相手を発見したのはどの地点か?そのときの時速は?
- 危険を感じたのはどの地点か?
- 危険を感じたときに回避措置として何をしたか?ブレーキか?ハンドル操作か?減速か?
- 信号が青から黄色に変わったのを見たのはどの地点か?赤に変わったのはどの地点か?
- そのとき、相手車はどこにいたのか?
等々・・・。そして、それらをすべて図面に記録していきます。それが実況見分調書です。双方の保険会社ではなく第三者でしかも利害関係のない警察が作成したものであれば信頼できるだろうということで、事故当事者の言い分が異なる場合には双方の保険会社は警察が作成した実況見分調書を過失割合を決める根拠とします。
※上記のことから、ケガをした被害者側は相手の言い分が少しでも事実と食い違う(嘘を付いているか勘違いしている?)場合には、警察に実況見分を行なってもらうために人身事故にするケースもあります。実際、それが賢明でしょう。
まとめ
以上のことをまとめてみますと、交通事故の過失割合は誰がどうやって決めているか?
双方の保険会社担当者が「判例タイムズ」をもとに類型化された同様の事故から過失割合を検討している、ということになります。
昨今はあおり運転をする人たちも増えています。自分の権利を主張して運転するのではなく、お互いに譲り合って運転をすればもっと事故も減るのではないかと思います。