交通事故で後遺障害申請の時期はいつから?
それはどんな症状なのかによりますが、もしそれが「頚椎捻挫」「頚部捻挫」「腰椎捻挫」「腰部捻挫」という診断だった場合(いわゆる「ムチウチ」です)であれば、事故受傷後6ヶ月を経過した時から申請することができます。
6ヶ月間治療したもののそれ以降、改善が見られないだろうと判断された場合、「症状固定」となります。その時が「後遺障害診断書」を書いてもらうタイミングです。(「症状固定」となった場合、以降の治療費は事故の相手(もしくは相手保険会社)には請求できなくなります。)
この「事故受傷後6ヶ月経過」で、後遺障害申請ができるというのは交通事故(自賠責)だけではありません。労災保険・身体障害者手帳なども同じです。治療から6ヶ月経過しても、治癒しない場合、残った症状を「後遺障害」として、申請することができます。
ただし例外があります。たとえば、頭部外傷後の高次脳機能障害やCRPS(複合性局所疼痛症候群)などの場合、受傷から最低でも1年の治療が必要です。
また、足の切断など6ヶ月経たずとも後遺障害が残ることがはっきりしているものはその時点で申請することができます。
交通事故の後遺障害に認定されるために大切なこと
交通事故に遭ったなら、治療をしている6ヶ月間を有意義に使う必要があります。有意義に使うとはどういうこと? それは、なぜその治療を受けているのか? 原因はどこにあるのか? その治療を受けていればどこの傷がどんなふうに改善していくはずなのか? といったことをケガをしたご自身がしっかりと把握するということです。治療法についてはその都度先生に確認なさってください。
また、自覚症状を把握して、その症状が残っているということは後遺障害何級に該当しそうなのか? などの目安を付けておく必要があります。交通事故の後遺障害等級は労災事故の等級と基本的には同じ基準が使われています。その基準から見て自分の症状がどれに該当するのかをどうぞ調べてみてください(参考までに「ムチウチ」はほとんどの場合、第12級もしくは第14級に該当します)。
自動車損害賠償保障法施行令(後遺障害等級と自賠責保険保険金額の表)
(リンク先の「別表第二」)
上記の等級を認定してもらい十分な賠償額を得るためには、漫然と整形外科や整骨院に通っているだけではダメです。後遺障害認定のためには、次のことを証明する必要があるからです。
- どんな自覚症状があるのか?
- その自覚症状は、医師から見てどんな他覚症状となって現れているのか?
- そしてそれら自覚症状や他覚症状を立証するどんな医学的根拠があるのか?(レントゲンやMRIなどの画像・血液成分などの検査結果・可動域を調べた結果など)
これらのことを証明するのは、加害者でも相手保険会社でもなく「被害者」であるあなたご自身です。
そうしますと大切なことは? それは、事故後の早い段階でレントゲンやMRIなどの精密な検査を受けておくということです。そうすれば、後で現れてくる自覚症状の原因がどこにあるのか等を証明する助けとなるからです。
もし最初の段階でその検査をしていない場合はどうなるのでしょうか? 6ヶ月経った頃に症状がなかなかよくならないので検査してもらい、そこで仮に異常があったとしても、それが事故による異常なのかを立証することは困難になります(でも6ヶ月経過後に撮影したMRIでも、ないよりはあったほうが良いです)。
ここで注意点を一つ。事故後に行く病院は大抵は整形外科なのですが、もしそこで行う検査がレントゲンだけであり、先生からは「骨には異常はありませんね」と言われた場合、確かに骨には異常がないかもしれませんが、神経などに異常がある場合もあります。
3ヶ月経っても一向によくならないのであれば、紹介状を書いてもらうなどしてでもMRIを撮っておくことをオススメします。「頚椎(腰椎)椎間板ヘルニア」などのように神経に損傷がある場合、それはレントゲンではわからないからです。
6ヶ月で治療打ち切り?
ところが、交通事故で病院(整形外科など)に通院して6ヶ月になる頃、保険会社の担当者から「6ヶ月で治療は打ち切りです」と言われることがあります。
そのとき、被害者(ケガをした人)はこう思います。
「いや、だってまだ治ってないよ。治療費はしっかり払ってもらわないと困るよ!」
保険会社は、3ヶ月頃、そしてその後は6ヶ月で治療打ち切りをほのめかします。もちろんそれはケガの程度によるのですが、なぜ治療打ち切りをほのめかすのでしょうか? なぜなら、大抵のケガ(特に「ムチウチ」)はそれくらいの期間の治療である程度まで回復するからです。6ヶ月でも回復しないケガもあるのでは? 確かにその通りです。ではその場合はどうするのでしょう?
6ヶ月で回復しないケガは「後遺障害」として申請すればよいのです。ケガをした方にとっては「後遺障害の等級をもらったってうれしくない。体を元通りにしてくれ!」と思うかもしれません。でも実際にはそれは無理なこと。そこで損害賠償の世界では、6ヶ月治療をしてもよくならなかったものを「後遺障害」として認定し、該当する等級(1~14級)に応じた金額を支払うことにしたわけです(症状が残っていても「後遺障害」として認定されないケースももちろんあります)。
ですから、交通事故で入院や通院などの治療を始めた場合、「6ヶ月経っても治らないケガもある」ことをあらかじめ念頭において治療をする必要があるのです。
言い換えると、前述の通り「自分の場合、この症状が6ヶ月後まで残ったとしたら、後遺障害何級何号に該当するのか」を意識しておくということです。そうすれば、繰り返しになりますが、それまでの間に病院でどんな検査をしておくべきなのか、どんな検査をしていないのか、などをあらかじめ理解して対応していくことができます。
このことを病院に期待するのは間違っています。病院は後遺障害認定を意識して治療しているのではありません。あなたのケガを治そうとして治療しているのです。治そうと努力しても治らなかったケガ、それが後遺障害です。それを意識して治療に励むのは被害者であるあなたご自身の仕事だと思ってください。
ですから、くれぐれも3ヶ月、あるいは6ヶ月を何も考えずにダラダラと病院に通うことがないようになさってください。とは言っても、後遺障害に関してはおそらく初めての経験だと思います。具合の悪い中で勉強はできませんよ、という場合は、ぜひ専門家(交通事故専門の行政書士など)を活用してください。
誰に後遺障害診断書を書いてもらう?
ところで、誰に後遺障害診断書を書いてもらうのがよいのでしょうか?
それは言うまでもなく、後遺障害診断書を書いてもらうまでの間に治療をしてくれた医師です。
大抵の医師は患者さんの治療のためにベストを尽くしています(と思いたい)。しかし、「後遺障害診断書」は医師にとっては、自分が治療してきたにも関わらず治らなかったことについて書かなければならない文書なのです。
そのことを考えますと、それまで治療のために通っていた病院で、信頼関係もできており、できる限りの治療をした後に担当の医師にお願いして書いてもらうというのがごく普通であることは容易にお分かりいただけると思います。そのような場合には、しっかりした後遺障害診断書を書いてもらいやすいと思います。
初めて来院した患者が、いきなり「6ヶ月前に交通事故に遭いました。他の病院でさんざん治療をしてもよくならなかったので、先生、後遺障害診断書を書いてください」と言っても、書いてもらえるはずはありません。なぜなら、事故直後のけがの様子がまったくわからないからです。仮にそれまでの画像や検査結果があったとしても、治療もせずに後遺障害診断書を書くことはありません。
ですので、後遺障害診断書はそれまで治療してもらっていたドクターに書いてもらうようお願いしましょう。もしいくつもの症状があり、その症状の数の病院に通っていたのであれば、複数の後遺障害診断書を書いてもらいましょう。
整骨院の先生に「後遺障害診断書」を書いてもらえる?
さて、ここで疑問が。「ムチウチ」の場合、整形外科ではなく整骨院に通っていた、ということもあるかもしれません。では、整骨院の先生に後遺障害診断書を書いてもらえるのでしょうか?
残念ですが、整骨院の先生には書いてもらえません。医師ではないからです。(後遺障害の認定をする機関である)自賠責調査事務所が重視しているのはあくまでも、医師の診断書です。そのことを考えますと、通院中に医師との良い関係を築いて置くことは大切ですよね。